夕立 11
K-systemさんによる写真ACからの写真

  五



「思ったより元気そうで、よかった」


 入ったのは事務所の向いにある喫茶店だった。

やって来た店員へ一通りの注文を終えた後、
グレーのスーツを着た叔父の幸弘が口火を切る。

叔父、とは言っても、彼は父の再婚相手の弟だ。

血のつながりはまったくなく、年も八つしか違わない。

それでも彼に叔父として接するのには、個人的な理由がある。

端的に言ってしまえば、意地のようなものだ。

母が他界して半年も経たないうちに、自分の娘と九つしか違わない女性との再婚を果たした父に対しての。

実際、叔父の口調は少しも打ち解けようとしないわたしに対して、
どう話を切り出したらいいか迷っているように聞こえた。


「おかげさまで」


 わたしは答える。

我ながら素っ気ない対応だとは思ったが、他にどう答えてよいのか分からなかった。

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