夕立 13
K-systemさんによる写真ACからの写真

  五



「たまには実家に帰ってゆっくりしてきたらどうだい?義
兄さんも君を心配しているし、姉さんだって……」
「わたしは平気です」


 咄嗟に叔父の言葉を遮った。

自分が思うより強い口調になってしまったらしいその反応を、
おそらく予想していたのだろう。

叔父は諦めたように溜め息を吐く。


「父と……美紀子(みきこ)さんには叔父さんから伝えておいてくれませんか? 元気だからって」


 わたしは声を搾り出した。


「紗っちゃん……」
「わたしは平気です」


 いくら父に対してこだわりがあると言っても、別段父の再婚相手に不満があるわけではなかった。

美紀子さんは父のことを心から想ってくれているし、
わたしに対してもよくしてくれていた。

客観的に見ればいい人だと、本心では思っている。

けれど、もはやあの家にわたしの居場所はなかった。

新たな居場所を共に作るはずだった婚約者も、もうこの世にはない。

あるとすれば、それは……。

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