夕立 19
K-systemさんによる写真ACからの写真

  六



 翌日の午後、今はもう跡形もないはずの大谷家へと向った。

天気予報はきちんと確認してきたつもりだったが、
目的地の直前で暗雲が垂れ込み、瞬く間に本降りとなった。

稲光までしてきた空に悪態を吐きながら、調査資料と報告書の入った鞄が濡れぬよう、
スーツの内側に隠して走る。

これで目的地が空き地だったらお笑い草だ。

立ち止まり辺りを見回すと、数ある住宅の一角に目的地を見つけた。

灰色の家壁に紺色の屋根と、小さな庭に点在する緑の木々が目に映る。

ぐるりと巡らされた塀の真ん中にある小さな門を潜り、
「大谷」と書かれた表札を幾度か確かめる。

ためらいがちにドアフォンを押し、驚きを込めその家を検分した。

家の外装は、火事に遭った以前とまったく同じに思えた。

違うとすれば、すべてが真新しいことくらいで。

火事などなかったかのような家を前に、わたしは奇妙な感覚を覚える。

と、ささやかな金属音と共に玄関の扉が開いた。

家の主人が物も言わずに開けたのか。

戸惑いつつ覗き込むと、家の中はしんと静まり返り、最奥まで薄暗い様は、
何もない倉庫のような空虚さで満ちていた。

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オープニング背景画像: K-factoryさんによる写真ACからの写真