夕立 24
K-systemさんによる写真ACからの写真

  六



「ご依頼された調査内容に関してはここに報告書があります。どうぞご覧ください」


 辛うじてずぶ濡れを免れた鞄から茶封筒を取り出し、
テーブルの上に置いた。

ちらりと向いの椅子を窺うが、
細く整った鼻筋と黒い髪、紺色のスーツに身を包んだ細い腕の他、
何も窺い知ることはできなかった。


「ありがとうございます」


 依頼主の彼、大谷優が窓辺から視線を外して、今一度頭を下げてくる。

優が書類を手にするのを待ってから、わたしは口を開いた。


「結果から申し上げますと、
大谷家の方々、特にあなたのお父様とお母様ですが、
火事の後正式に離婚され、今はお互いに別々の家庭をお持ちになっております。
その他の方々も同様にそれぞれ新しい生活を営まれており、
ごく平穏に暮らしているようです」


 優は答えない。


「それぞれの方々の現住所はお手元の報告書にある通りですので、
もし連絡をお取りになりたいのであればご参考になさってください。ただ……」
「ただ?」
「ただ、調査員が調査を進めるに当たってどうしても理解しがたいことが
いくつかありまして」


 ほう、と優が調査書を捲る手を止め、ちらりと視線を向けてくる。


「それはどのようなものでしょう?」
「実はあなたのご両親を含めすべての関係者の方々が、
口を揃えて当調査員におっしゃられたことに、『あなたはすでに亡くなられている』と……」


 わたしは紅茶のカップを手にとって、一くち口にした。

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