夕立 27
K-systemさんによる写真ACからの写真

  七



 一九八三年五月六日、火曜日。午前十一時三十分のことだ、と優は語り出す。


「パパ、パパ」


 優は彼の父、正夫の足に縋りついていた。


「なんだい? 優」
「パパ、ねぇ、あれ買ってよ、あれ」


 デパートのおもちゃ売り場に積み上げられた、
プラスチック製のロボット人形を必死で指差す。

だが、父は見るなり首を横に振ったのだそうだ。


「だめだめ、あんなくだらないもの。
優にはもう必要ないだろう?」
「でも、ぼく」
「優」


 食い下がろうとするが諌められた。


「いいか、優。優は普通の子とは違って特別なんだ」
「とくべつ?」
「そうさ。お前はね、神様の生まれ変わりなんだから」
「神さまの?」


 優には父に告げられた言葉の意味が分からなかったそうだ。

素直に首を傾げると、父が口元を綻ばせる。


「そう。だから優にはね、
あんなガラクタじゃなくて、もっとすごいものを買ってやろう」
「ほんとう!」


 瞳を輝かせはしゃぐ優の頭をくしゃりと撫でて、
父は優の手を取ってくれた。

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