夕立 31
K-systemさんによる写真ACからの写真

  七



 同年五月七日、午後一時十五分。

その日は朝から曇っていた、と優が言葉を紡ぐ。


「優ちゃんってすごいんだねぇ」


 真理が手を叩いて優を褒めたのだそうだ。


「優ちゃんって何でもできるんだねぇ」


 真理が優の顔を覗き込んだ。


「でも優ちゃんって、お外で遊んじゃいけないんだよねぇ」


 真理が勝ち誇ったように笑った。優は唇を噛み締めた。


「あれあれぇ? 優ちゃん、泣いてるの? 
わぁ優ちゃんって泣き虫ねぇ。
忍くんはそんな風には泣かないわよ?」


 優は瞳から競り上がってくる涙を必死で堪えた。

悔しくて堪らなかった、と優は語る。


「優ちゃん。
優ちゃんのママって病気なんだってね。ママが言ってたよ」


 次の瞬間、優は真理を睨むと手を唸らせたのだそうだ。

手は勢いよく真理の頬を鳴らした。

優の母、紀子がやった時のように。

真理はその場に倒れた。

しばらくは呆然と自分の掌を見つめ続けました、と優が苦笑した。

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