夕立 34
K-systemさんによる写真ACからの写真

  七



 同年同日、午後一時五十四分のことだ、と優が笑みを深くする。


『おどれ、おどれ』


 腫れ上がった顔をそのままに自室へ篭った優の頭の中で、
突然語りかけてくるモノがあったのだそうだ。


『おどれ、おどれ』


 優はそれを必死で振り払おうと頭を叩いた。


(きもちわるいよぉ……)


 優は泣いた。

自分の中で見知らぬ何者かが語りかけてくる。


『おどれ、おどれ』


 一体なんなのか。

その時の優には分かるはずもなかったのだそうだ。

ただ、どうしようもない使命感が優の内心から沸き起こり、心を支配する。


『おどれ、おどれ』

 逆らうことなどできはしない。

いや、逆らう気など元よりなかったのかもしれない、と優は微笑する。


『おどれ、おどれ』

 自分は取り憑かれたように、
ゆっくりとペンを走らせたのだ、と告げ、優はそっと瞳を閉ざした。

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