夕立 35
K-systemさんによる写真ACからの写真

  七



「まだ、質問はありますか」


 語り終えた優は、ゆっくりと視線を向けてきた。


「ええ、あと一つだけ」


 わたしは首肯する。


「あと、一つだけ、ですね?」


 彼は再度確認するように、一つずつ言葉を紡いだ。


「はい」


 わたしも今一度肯定した。


「わかりました、お聞きしましょう」
「ありがとうございます」


 窓辺から閃光が走り、雷鳴が室内に轟く。

またどこかに落雷したのかもしれない。

漠然と思いながら、わたしはバッグから小さな紙片を取り出した。


  『おどれ、おどれ』
  闇の中で誰かがぼくにそう叫ぶ。だから
  ぼくは、ぼくは何かしなくちゃならない気がして……。  優


 読んでみせると、優の眉がほんのわずか上下した。

わたしは彼の瞳をまっすぐ見つめて問う。


「どうして、こんな文章を?」
「僕のせいではない、と言いたかったから、です」


 優が暗い笑みを口の端に乗せる。窓辺から降り注いだのは、
またしても閃光だった。

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