夕立 36
K-systemさんによる写真ACからの写真

  七



 どん、という音とともに耳目から背筋を駆け抜け家屋を揺らす。


「僕が、僕の周りの人を壊していったんじゃないと言いたかったからです」
「壊した? あなたが?」


 そうです、と優が頷く。酷薄な笑みはそのままに。


「あなたはもうご存知のはずでしょう? 
あの日、あの時、僕たち家族に何が起こったか。
いや、僕が何をしたのか、を」
「ええ、でも……」
「あの日、僕はもう限界だった。
そんな時、僕の中で誰かが語りかけてきたんです。
『おどれ、おどれ』って。僕は怖くて、怖くて。
でも、同時にとてもその声は魅惑的で……。
気がついたら夢中でペンを取り書き殴っていました。
『僕のせいじゃない!』と。
でもやっぱり途中で怖くなって破いてしまおうとした時、
突然やって来た僕の家族たちが、次々とバラバラに崩れ……」
「違う」


 わたしは優の言葉を遮った。

話を中断された優が、見開いた瞳を一度閉ざしまた開く。

視線をこちらへと向け、間の抜けた声を出した。


「え?」


 堅く閉ざされた窓に雨が吹きつけ、ガラスを軋ませる。


「違うわ」


 わたしは再度同じ言葉を繰り返した。

 優へ言い含めるように、自らに確認するように、ゆっくりと。

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