夕立 最終話
K-systemさんによる写真ACからの写真

  八



 時は瞬く間に過ぎ、気づけば五年の歳月が流れた。

あの出来事があって後、わたしは婚約者の死を受け入れ生きる決意をした。

元の職場に戻って仕事をこなし、また恋もした。

相手は五年の間、ずっと見守ってくれた義理の叔父、桐野幸弘だ。

色々あったけれど、また手にすることができた幸福な日常である。

  けれど、それでも時折思い出すのだ。

大谷優という、命の恩人のことを。

彼と出会ったあのつかの間の思い出を、
わたしは一生胸に抱いて生きていくだろう。

それは決して彼のためでなく、自分のためではあるけれど、それでも。


『僕はあなたが大嫌いです。この先もずっと』


 最後に優が告げた言葉と微笑みは忘れない。

だって、彼がわたしのことを
酷く気に入ってくれたのだということを、知っているから。


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