夕立 9
K-systemさんによる写真ACからの写真

  四



 入ってきたのはグレーのスーツを着た細い体躯の男だった。


「おかえりなさい、所長」


 美喜が心底ほっとしたように顔を綻ばせる。

所長、と呼ばれた叔父は、ずり落ちそうな眼鏡を気にしつつ軽く片手を上げ、

人好きのする笑みを浮かべた。


「やあ、久しぶり」


 三ヶ月ぶりに見る叔父は最後に見たときと別段変わった風もなく、
わたしの前へ立つ。


「待たせてしまったかな」
「いえ。お久しぶりです、叔父さん、いえ所長」


 頭を下げると、叔父は居心地悪そうに頭を掻いて辺りを見回す。

たったそれだけの台詞で、
叔父はわたしたちの間に流れていた雰囲気をはや察したようだった。

一つ前を読む   小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像: K-factoryさんによる写真ACからの写真